タイ不動産購入ガイド -タイ不動産に関する諸制度-


タイ不動産購入ガイド,タイ不動産に関する諸制度,タイ不動産購入お役立ち情報,バンコク物件.com

1.不動産に関する法制度 (出典:国土交通省 https://goo.gl/H9f2UD

■不動産関連法・制度の現状

民商法典(Civil and Commercial Code)において、不動産、売買、賃貸借、使用貸借等に関する一般規定が定められている。土地法(Land Code B.E.2497(1954))が土地の所有権移転、移転登記、土地の権利証、外国人(法人を含む)の土地所有等の事項を定めている。コンドミニアム法(Condominium Act B.E.2522(1979))がコンドミニアムの区分所有、外国人(法人を含む)による同所有に関する事項を定めている。

■土地不動産の所有権

〔基本概念〕

土地のほかに、建物は別個の不動産として所有権の対象となる。そのため、建物を土地の所有者と異なる第三者が所有することも可能。不動産の売買については、売買契約の締結に加え、土地事務所における登記を完了させることで売買の効力が発生する。

 

〔土地・不動産の所有権〕

土地、建物はそれぞれ別個の不動産として所有権の対象となる。そのため、建物を土地の所有者と異なる第三者が所有することも可能である。

 

〔外国人の土地および不動産の所有権〕

原則として外国人(法人含む)は土地を所有できないが、下記の通り例外もある。

 

住居目的の土地所有

4,000万バーツ以上の投資金を持ち、投資期間が3年以上、指定された地域内の土地であるなどの条件を満たした上で大臣による承認が得た外国人は、1,600㎡まで土地を所有できる。

 

企業の土地所有

外国人が登録資本金の49%超の株式を保有している場合、又は、外国人株主が全株主の過半数を占める株式会社は所有できない。

 

タイ投資委員会(BOI)奨励企業やタイ工業団地公社(IEAT)認定の工業団地に立地する企業の場合は、外資比率にかかわらず土地取得が可能。

 

建物については外国人に対する特段の規制はなく、外国人も所有が可能。

 

また、コンドミニアム法において、外国人(法人を含む)のコンドミニアムの所有が認められている。外国人、外国法人が保有するコンドミニアムのユニットの総床面積は、コンドミニアムの全ユニットの総床面積の49%を超えてはならない等の条件がある。

■土地・不動産の登記

〔土地の登記〕

管轄地の土地事務所(Land Office)にて登記する。書面による合意と土地事務所での登記が土地売買の有効要件となる。

土地の所有権を証するものとして土地権利証書(Chanote)が発行される。

 

土地の権利に関する重要な書類としては、契約書、権利証書(Chanote)、確認済使用権証明書(Ngor Sor Saam GorまたはNS3G)の3点が挙げられる。

 

権利証書(Chanote、Nor Sor 4とも言われる)は、土地の完全な所有権を証明する証書で、管轄の土地事務所により原本が2部発行され、1部が土地の所有権者に交付、もう1部が当該土地事務所に保管される。原則、土地事務所のデータベースに保管されており、土地事務所のWebsiteにおいて検索することができる。

 

なお、権利証書は全ての土地で発行されているわけではなく、下記の通り、その他の各種証明書が代替的に利用される場合もある。但し、土地所有権そのものを証明するものではない。

 

 ▷使用権証明書(Ngor Sor Saam またはNS3)

 ▷占有証明書(Sor Kor Neung)

 ▷土地税納付証明書(Por Bor Tor 5)

 

〔建物の登記〕

土地と同様に書面による合意と登記が売買の有効要件となる。建物の売買の際は、土地事局において売買契約証書に署名し、30日間の公告期間を経て、土地事務所から売買証明書が発行される。売買証明書は土地の権利証書とは異なり、建物の所有権を直接証明する効力はない。

建築後売買の対象になっていない建物の所有権を示す証拠としては、建物建設時に取得する建設許可証が用いられる。

〔鑑定評価概要〕

不動産鑑定にはタイ政府基準または国際的基準、評価法規が存在していない。民間の鑑定士資格はあり、下記が主要団体となる。

 

鑑定関係主要団体

▷タイ鑑定士協会(VAT:The Valuers Association of Thailand)

独自の鑑定基準を定めている民間団体。一定のスキルを有した者に鑑定士(Valuer)資格を認定する。鑑定資格は政府からの認可や免許・登録を受けていない非国家資格。

▷タイ鑑定評価協会(TVA:Thai Valuation Association)

 

〔鑑定基準に関する今後の動向〕

近年タイ証券監視委員会(SEC:Security and Exchange Commission)によって、鑑定評価基準が若干改正された。鑑定業界内では、国際的基準を導入すべきだとの意見が出始めており、今後導入が見込まれる。

■法制度が確認できるWebサイト

2.不動産の取引に関する制度 (出典:国土交通省 https://goo.gl/H9f2UD

■不動産を取引する際の制度

〔制度概要〕

実務上、土地事務所の登記官の面前において、所定の契約書様式に必要情報を記載し、売り手と買い手が署名し、さらに登記官が署名して公印を押す。依頼を受けた代理人弁護士が同席することもある。

土地売買における詐欺等の問題を防ぐために、登記手続きの完了を見届けた後、売買代金の支払いを行うことが推奨される。

■消費者保護(インスペクション、瑕疵対応、その他)

〔消費者保護の規制〕

不動産に特化した法律ではないが、購入者と販売者は消費者保護法で守られている。また、Real Estate Professionals Trade Associationは、インスペクションサービス「200 point Pre-Purchase inspection」を行っている。サービス内容は下記の通りである。

 

▷現地調査を行い、インスペクションの詳細レポートを提出。建物の内外、電気系統も全てインスペクションの対象となる。

▷購入を予定している不動産の全ての情報を提供する。

▷インスペクターは豊富な知識と訓練された者で構成されている。

▷インスペクターは買主、売主双方にとって有益な問題解決方法を提示する。

 

実際には、工事遅延や購入後の瑕疵の発覚によって買主が損害を受けるケースがある。不動産購入の際には、信頼できる不動産会社等に相談する、事前の入念な現地視察、調査等を実施し、慎重に検討することが必須である。

 

コンドミニアム法(Condominium Act B.E. 2551 第6/2条)によれば、コンドミニアムのユニットの売買の際には所定のフォームの契約書を締結しなければならないとされている。この所定のフォームの契約書において、売主が登記日から構造部分については5年間、非構造部分については2年間の瑕疵保証期間が記載されている。

 

民商法典上は、瑕疵を発見した時から1年間のみ責任を負うとしており、コンドミニアムの契約書の書式にはこれよりも長い期間が記載されている。なお、実際には、締結する契約書の作成は、所定のフォームを基に登記官が改めて作成し直している。

 

契約書フォームは下記で確認ができる。

http://www.dol.go.th/dol/images/medias/dol/dol/pdf/mt17301.pdf

■不動産行政の方向性(新築・中古、長期・短期、持家・借家)

2011年政府住宅銀行(GBH)による0%金利住宅ローンの供与を実施。100万バーツ(約246万円)以下の住宅を初めて購入する者が対象者で、返済期間が最長30年、ゼロ金利は当初3年。その他、GBHは低所得者向け融資を強化する等している。

不動産金融(住宅ローンの実態、ローン審査、担保評価)

〔住宅ローンの実態〕

住宅購入時には2~3割程度が住宅ローンを利用し、変動金利が主で、2011年新規貸し出しのうち商業銀行が6割、政府住宅銀行3割となっている。

 

住宅ローンの家計負債率が高いため、政府系金融機関のタイ信用保証公社(TCG)と抵当証券公社(SMC)が保証を供与することを計画。債務不履行に陥った場合は、TCGとSMCが融資の全額もしくは一部を肩代わりする。また、2016年には、政府貯蓄銀行(GSB)と政府住宅銀行(GHB)は、初めて住宅を購入する低所得者を対象に、低金利住宅ローンの実施を開始した。

 

〔ローン審査〕

商業銀行各国のローン審査は、低所得層、富裕層いずれにおいても厳格化しており、住宅ローン却下率が2016年で25%~30%上昇する見通し。これを受けて、政府は低所得者向けの住宅開発と住宅ローンの提供を進めている。

 

〔担保評価〕

住宅ローン利用時には、不動産鑑定人の鑑定評価による不動産担保価値の審査がある。鑑定評価は売り手買い手双方からのニーズがある。これら鑑定業務は投資用不動産の時価評価、担保評価等で需要はあるが、不動産鑑定業者が関連業務の法人を設立する際の規制は無い。

■不動産のリース(期間、延長・解除の是非)

賃貸住宅の契約は普通借家契約で、一般的な契約期間は1年。契約終了時に貸主の合意があれば、借主は賃貸期間を延長できる。土地や建物の賃貸は最長30年まで可能。30年を超える期間の賃貸借契約を希望する場合には、賃貸借契約を更新する方法によることが一般的。

 

賃貸期間が3年を越える不動産は、土地事務所に登記しない限り3年間しか拘束力を持たない。このためオフィスの賃貸期間は、登録義務を避けるために3年以内とされるのが一般的。

■不動産取得に関する税制

〔特定事業税〕

特定事業税は、金融機関、証券、保険、不動産販売業などの特定事業に課税される。

不動産販売業については、3.3%課税される。

 

〔印紙税〕

税率は、文書や証書の種類によって異なる。税率は契約書/同意書では1,000バーツにつき1バーツ課税される。

 

〔キャピタルゲイン税〕

贈与の場合と贈与以外の場合で課税方法が異なる。

 

贈与等により取得した不動産の譲渡益については、その譲渡金額の50%相当額を低額(率)控除することが認められる。そして、残余の金額(正味取得金額)を保有年数で乗じた上、個人所得財率表に基づき単年度あたりの税額を計算し、それに保有年数を乗じて納付すべき個人所得税額を算出する。

 

贈与以外の場合、保有年数により控除率は1年所有の8%から8年以上所有の50%まで変動し、正味所得金額に税率を掛けて所得税率となる。個人所得税額の上限は20%である

■不動産保有に関する税制

〔土地・建物税〕

2017年1月より施行される予定だった固定資産税。現在も発効について審議中。(2017年11月)

 

貧富の格差是正や税収増などを目的に導入される。法案によると、税率は累進制で、農地、住宅、商用、遊休地(未使用の土地)の4区分で異なる。導入に伴い、現行の土地・建物関連の税である地域開発税などは廃止される。

 

農地は、評価額5,000万バーツ(約1億4,600万円)未満の場合は非課税で、最高税率は0.2%。住宅は最高税率が0.5%で、初めて取得した住宅と2軒目以降で税率の体系が異なり、初めての住宅は評価額5,000万バーツ未満が非課税。商用の最高税率は2.0%、遊休地の最高税率は5.0%に設定されている。

 

旧法の土地家屋税(Land and building tax)や地域開発税(land Development tax)は廃止となる予定。

 

なお、旧法の土地家屋税では、土地・家屋の所有者が指定地域にいる場合、毎年課税されるもの。税率は毎年の想定賃貸料相当額の12.5%で、た所有者が自分で住むための土地、家畜用の土地、耕作用の土地は対象外となる。

 

想定賃貸料は実際の賃貸料もしくは建物が賃貸中の場合は所管の税務署員が見積もる想定賃貸料。

 

〔看板税〕地方税

収益事業目的で使用される会社名、商号、商標などが記載された看板の所有者に課される税。看板の面積に応じて課税され、タイ語表記と外国語表記で税率が異なる。外国語表記の方が高く、タイ語表記は500平方センチメートルあたり3バーツ、外国語表記は同面積あたり40バーツ。

■その他税制(租税条約等)

〔日タイ租税条約〕

源泉税率は配当金10%、利息15%、ロイヤルティ15%。金融機関への利息支払については10%に軽減される。

 

〔相続税・贈与税〕

2016年2月1日より導入。相続税は1億バーツ超の資産を相続した相続人は10%、相続人が直系尊属または直系卑属の場合には5%が課税される。贈与税下記において一律5%課税される。

 

▷暦年中に、嫡子(養子を除く)が親から、贈与または不動産の所有権もしくは占有権の無償譲受を得た場合、その2,000万バーツ超の部分。

▷暦年中に、直系尊属・卑属、配偶者から、生活支援もしくは贈り物を得た場合、その2,000万バーツ超の部分。

▷暦年中に、直系尊属・卑属、配偶者以外の者から、道徳的な生活支援もしくは式典や慣習や伝統などに基づく行事などで贈り物を得た場合、その1,000万バーツ超の部分。

3.不動産取引に関する外国人及び外国資本に対する規制 (出典:国土交通省 https://goo.gl/H9f2UD

■外資に関する優遇措置もしくは規制

原則として外国人(法人含む)は土地を所有できない。下記の通り例外もある。

 

住居目的の土地所有

4000万バーツ以上の投資金持ち厳格な査定や条件を満たした上で大臣による承認が得た外国人は、1600㎡まだ土地を所有できる。

 

企業の土地所有

外国人が登録資本金の49%超の株式を保有、外国人株主が全株主の過半数を占める株式会社または公開株式会社、類似したパートナーシップ、財団は土地を所有できる。タイ投資委員会(BOI)奨励企業やタイ工業団地公社(IEAT)認定の工業団地に立地する企業の場合は、外資比率にかかわらず土地取得が可能。

 

なお、外国人による建物の所有は禁じられていないため、外国人が土地を借りた上で、賃貸借契約の規定に従って土地上に建物を建築して所有することは可能である。